働き方改革が推進される中、労働環境について、とりわけ、残業時間を含む労働時間をいかに減らすか(又は増やすか)について、関心を持たれている方が多いのではないでしょうか。
使用者の視点に立つと、従業員の労働時間を増やして取引先等のニーズに応えたい、反対に、従業員に支払う残業代を少しでも減らすために残業時間を減らしたいしたいという思惑が、従業員の視点に立つと、少しでも残業時間を減らして家族サービスにまわせる時間を確保したい、反対に、できるだけ残業時間を増やして家族を支える収入を確保したいという思惑等、様々な立場から様々な思惑が交錯しています。
そもそも、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、通常、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。 例えば、始業が9:00で終業が18:00、休憩時間が12:00〜13:00の場合、1日あたりの労働時間は8時間となります。仮に、月曜日から金曜日までの週5日勤務とした場合、8時間×5日=40時間が、1週間あたりの労働時間となります。
この会社と従業員との間で決められた労働時間のことは、「所定労働時間」と呼ばれています。
労働基準法によると、労働時間の長さは、原則として、1日8時間以内、週40時間以内に制限されていて、この法律で制限された労働時間のことは、「所定労働時間」とは別に、「法定労働時間」と呼ばれています。
所定労働時間は、原則、法定労働時間を超えて設定することはできません。
また、休日とは、労働契約で労働義務がないとされている日のことをいいます。使用者は労働者に毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければいけないとされています。何曜日を休日と定めても、また、週によって休日の曜日が異なる定めをしても、法令上は問題ありません。
会社が、法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合や法定休日に働かせる場合、あらかじめ、事業場の過半数労働組合(ない場合は、労働者の過半数代表者)との間で、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、一般的に、36協定と呼ばれています。会社は、この36協定を締結してはじめて、従業員に対し、1日8時間や週40時間という法定労働時間を超えた労働をさせることが可能になるのです。
参考までに、2020年のデータになりますが、国別の週あたりの実労働時間(就業者)をみてみると、日本が36.6時間なのに対し、カナダ30.9時間、ドイツ34.2時間、フランス35.9時間、スウェーデン34.9時間、オーストラリア31.5時間など、日本よりも労働時間が少ないのに対し、アジアに位置する韓国38.7時間、シンガポール44.0時間、タイ40.3時間などでは、逆に、日本より労働時間が多くなっているのが印象的です。
(引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2022」)