労働基準法第36条第1項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、・・・・労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
労働基準法施行規則第16条第1項
法第36条第1項の規定による届出は、様式第九号により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
この様式第九号については、2021年4月から様式が変更になっていて、使用者の押印及び署名が不要となった他、労働者代表についてのチェックボックスが新設されています。元々、労働者側の過半数代表者の押印及び署名が不要だったのですが、使用者の押印及び署名まで不要(記名は必要)になりました。
ここで注意が必要なのは、労働基準監督署長に提出する36協定届には、使用者及び労働者過半数代表者の署名・押印が不要になりましたが、36協定書自体には、双方の署名・押印が必要だということです。
上記労働基準法の規定を読むと、①書面による協定(協定書作成)をした上で、②厚生労働省令で定めるところにより(要は、様式第九号の書式を使って)これを行政官庁に届け出ることが必要とされています。つまり、労使間の合意により協定書を作成し、管轄の労働基準監督署長にその旨の届出をしてはじめて、36協定の効力が発生するのです。
36協定書は、労使間で合意した内容が書かれていて、かかる内容について労使間の合意があったことを証明するために作成されるものです。それに対し、様式第九号(36協定届)は、労使間で締結した協定の内容について、管轄の労働基準監督署長に届出をするために別途作成する書類になります。要は、36協定を締結するための書面が協定書、締結した36協定を労働基準監督署長に届け出るための書類が様式第9号(協定届)です。この2つの書類は、名前が似ていることもあり混同されることも多いですが、作成目的が異なる別の書類であることに注意が必要です。
別の書類であることから、労働基準監督署長に提出する様式第九号(36協定届)に双方の署名・押印が不要になったからといって、協定書の署名・押印まで不要となるわけではなく、協定書については、これまで通り、使用者側と労働者側の署名・押印が必要となります。
ただ、協定書と様式第九号(36協定書)の内容はほとんど変わらないことから、わざわざ同じような内容の協定書を別途作成する手間を省くため、様式第九号を協定書の代わりに使用することも認められています。実際、多くの企業では、そのような取扱いをしています。
具体的には、様式第九号(36協定届)に必要事項を記載の上、双方が署名・押印し、その写しを労働基準監督署長に提出し、原本を協定書として社内で保管するという取扱いです。
このように、様式第九号(36協定届)が協定書を兼ねている企業においては、様式第九号(36協定書)に双方の署名・押印が必要となりますので、忘れないようにしましょう。