近年、長時間労働は疲労の蓄積の重要な原因と考えられ、精神障害や脳・心臓疾患などの健康障害との関連が高いことが疫学的に認められています。2021年度に厚生労働省が公表した『令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します』によると、業務における過重な負荷によって脳・心臓疾患を発症したとする労働災害補償の支給決定件数は172件で、そのうち時間外労働が100~120時間(1ヶ月間)の件数がもっとも多くなっています。このような長時間労働による健康問題を予防することを目的に、労働安全衛生法は、事業者に対し、長時間にわたる労働により疲労の蓄積した労働者に医師による面接指導を実施することが義務づけています。
面接指導を実施するのは医師ですが、事業場に選任されている産業医がいる場合はその産業医が、産業医が選任されていない事業場においては、地域産業保健センターの登録医、健康診断機関の医師、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師が実施することが望ましいとされています。
面接指導は、原則として対面で行う必要がありますが、産業医等が表情やしぐさなどを確認できること等一定の銃剣を満たせば、テレビ電話等の情報通信機器による面接指導を行うこともできます。
面接指導では、1.当該労働者の勤務の状況、2.当該労働者の疲労の蓄積の状況、3.前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況について確認を行うものとされています(安全衛生規則52条の4)。1から業務の過重性を評価されし、2・3から疲労蓄積状況が評価され、医師は、生活習慣などへの指導や助言、あるいは就業上の必要な措置を実施すること、医療機関への受診勧奨などを行います。
面接指導の対象となる労働者
(1)労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く):月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者(申出)
(2)研究開発業務従事者:(1)に加えて、月100時間超の時間外・休日労働を行った者
(3)高度プロフェッショナル制度適用者:1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について月100時間を超えて行った者
事業者は、労働時間の状況を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録する必要があります。時間外・休日労働時間が月80時間を超えた場合、事業者は、月80時間を超えた労働者本人に対し、この超えた時間に関する情報を通知する他、当該労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数等の情報を産業医に提供する必要があります。