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2025/03/27
各種保険

通勤災害について

 

みなさんは、通勤途中に交通事故に遭ったような場合であっても、労災保険の適用があると聞いたことがあるかもしれません。

 

事業主は、通勤の経路についてまで安全配慮義務を負う(例えば、交差点で会社の従業員が交通整理をするなど)わけではなく、また、労働保険法上も業務上の災害ではないという扱い(原則)であったことから、以前は、通勤途中に事故に遭った場合、被災者は加害者側(使用者、損害保険会社を含む)から直接賠償を受けることしか損害の回復を図る方法はありませんでした。

 

しかし、通勤途中の事故が増加するに伴い、被災した労働者の保護のため、通勤途中での災害に対しても業務災害並みの補償を行う制度が労災保険法に規定されることになりました。通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡のことをいいますが、労災保険法は、通勤について以下のような定義をしています。

 

 

労働者災害補償保険法7条

2 通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

一 住居と就業の場所との間の往復

二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に

  該当するものに限る。)

 

 

一般的な意味での通勤というのは、仕事のために自宅と勤務先を往復することとされていますが、通勤災害の場合の通勤というのはそれよりも範囲が広く、一定の要件に該当する場合に限りますが、住居間の移動についても含んでいたりします。

 

この「就業の場所から他の就業場所への移動」というのは、仕事の掛け持ちをしている人がそのまま別の就業場所に移動するような場合のことで、同一の雇用先の別店舗への移動等(通勤災害ではなく業務災害)については想定されていません。

 

一方で、例えば、会社から自宅に帰る途中で居酒屋に寄り飲み食いをするような場合、一般的には、居酒屋を出た後の移動時間についても通勤とイメージされることもあるかもしれませんが、労災保険法上では、いったん移動経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、原則として、逸脱又は中断の間及びその後の移動は、「通勤」とはなりません

 

逸脱」とは、通勤の途中で就業又は通勤と関係のない目的で合理的な経路からはずれることで、「中断」とは、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことです。

 

 

先に挙げた通勤途中に居酒屋で飲み食いをする場合でいうと、その居酒屋が通勤ルートから外れている場所にある場合は「逸脱」に、たまたま通勤ルート上にある居酒屋に寄った場合は「中断」に該当するでしょう。どちらにしても、逸脱、中断した時点で通勤とは評価されなくなり、その後、経路に戻り事故に遭ったとしても労災保険の適用は受けられません。

 

ただし、逸脱・中断があっても例外的に「通勤」とされるケースもあります。逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断をしたとしても、「通勤」となる(逸脱・中断の間は除く)とされています。

 

 

ここでいう「やむを得ない事由」というのは、以下の5つの行為を行う場合です。

 

(1) 日用品の購入その他これに準ずる行為

(2) 職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育その他これらに準 

    ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

(3) 選挙権の行使その他これに準ずる行為

(4) 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

(5) 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の 

    介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)

 

 

この「日用品の購入その他これに準ずる行為」というのは、具体的には、帰途で惣菜等を購入したり、独身者が食堂に食事に立ち寄ったり、クリーニング店に立ち寄ったりする行為のことをいいます。

 

日用品の購入だったり選挙権の行使、通院のような場合であれば、通勤ルートから大きくそれることなく(通勤ルート上の近くにある店、投票所、クリニック等に行くことが多い)、また時間もそれほど要しないということで、通勤と言われてもそれほど違和感はありませんが、講義を受けたりする場合まで含められることについては、個人的には、若干の違和感を覚えます。

 

 

ちなみに、この通勤災害のケースで紛争になることが多いのは、就業に関する移動といえるのか(就業関連性)、合理的な経路及び方法といえるのかという点です。 

 

 

就業関連性

 

「就業に関し」とは、往復行為が業務と密接な関連をもつて行われることを要するとされています(昭48.11.22基発644号)。

 

 

・ 全職員について参加が命じられ、これに参加すると出勤扱いとされるような会社主催の行 

  事に参加する場合

・ 事業主の命をうけて得意先を接待し、あるいは、得意先との打合せに出席するような場合

・ 寝すごしによる遅刻、あるいはラッシュを避けるための早出等の場合

・ 公共職業安定所等でその日の紹介を受けた後に、紹介先へ向う場合で、その事業で就業す 

  ることが見込まれるとき

・ 午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために再び出勤する場合

・ 業務の終了後、事業場施設内で、囲碁、麻雀、サークル活動、労働組合の会合に出席(2 

  時間程度)をした後に帰宅するような場合

 

  

 

・ 休日に会社の運動施設を利用しに行く場合

・ 会社主催ではあるが参加するか否かが労働者の任意とされているような行事に参加するよ 

  うな場合

・ 事業主の命によつて労働者が拘束されないような同僚の懇親会、同僚の送別会への参加等

・ 一般の組合員が労働組合大会に出席するような場合

・ 運動部の練習に参加する等の自的で、例えば、午後の遅番の出勤者であるにもかかわら

  ず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合

・ 公共職業安定所等でその日の紹介を受けるために住居から公共職業安定所等まで行く行為

 

 

合理的な経路及び方法

 

合理的な経路及び方法」とは、当該住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等をいいます。

 

会社に届け出ている鉄道、バス等の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路等については、合理的な経路となります。タクシー等を利用する際、通常利用することが考えられる経路が2,3あるような場合にはいずれの経路についても合理的な経路となるでしょう。

 

子供を託児所、親せき等にあずけるためにとる経路についても、就業のためにとらざるを得ない経路であることから、合理的な経路とされます。

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