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2024/12/20
退職・解雇

試用期間中(終了時点)解雇について(2)

前回、試用期間中(試用期間終了時点で)の解雇についても、労働契約法16条の適用があり、「客観的に合理的な理由」、「社会通念上相当であること」という要件を満たさなければ無効になるとお話させていただきました。 

 

 

この点、多くの裁判例では、試用期間中(試用期間終了時点で)の解約権の行使に関しては、通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められるという前提で判断されています。ただし、あくまでも試用制度の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならないとされているので、皆様が考えておられるよりも、試用期間中(試用期間終了時点で)の解雇が認められる要件は厳しいと考えておいた方がよいかもしれません。

 

多くの方が誤解されていますが、決して、試用期間中だから簡単に解雇にできるという訳ではありません。

 

この点、裁判所は以下のように判示しています。

 

(最大判昭48.12.12)

「留保解約権に基づく解雇(試用期間終了時での解雇のことです)は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない。

 しかしながら、前記のように法が企業者の雇傭の自由について雇入れの段階と雇入れ後の段階とで区別を設けている趣旨にかんがみ、また、雇傭契約の締結に際しては企業者が一般的には個々の労働者に対して社会的に優越した地位にあることを考え、かつまた、本採用後の雇傭関係におけるよりも弱い地位であるにせよ、いつたん特定企業との間に一定の試用期間を付した雇傭関係に入った者は、本採用、すなわち当該企業との雇傭関係の継続についての期待の下に、他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることに思いを致すときは、前記留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である。」

  

(東京地判平24.8.23)

「解約権の留保の趣旨・目的は、上記のとおり本来、試用期間が試用労働者に対する実験・観察のための期間であることにかんがみ、当該試用労働者の資質・性格・能力などの適格性について「後日における調査や観察に基づく本採用の最終的決定を留保」することにある。したがって、留保解約権の行使は、通常の解雇の場合と比較し、広い範囲で容認されるものと一応は解されるが、ただ、そうはいっても、上記のような試用労働者の適格性判断は、考慮要素それ自体が余りに抽象的なものであって、常に使用者の趣味・嗜好等に基づく恣意が働くおそれがあるのも事実である。そうだとすると留保解約権の行使は、実験・観察期間としての試用期間の趣旨・目的に照らして通常の解雇に比べ広く認められる余地があるにしても、その範囲はそれほど広いものではなく、解雇権濫用法理の基本的な枠組を大きく逸脱するような解約権の行使は許されないものと解される。」

 

ほとんどの裁判例において、「試用期間は試用労働者に対する実験・観察のための期間」とされ、会社のために設けられた期間という前提で判断されていますが、個人的には、試用期間というのは、会社が労働者の適性を判断する期間というだけでなく、労働者が会社のことを観察・判断する期間でもあるべきと考えています。 

 

一定期間試用されてみて、この会社とは合わないと考えたらそのまま退職する。

 

昨今、退職代行業者を利用する人が増えていると言われていますが、試用期間を従業員が会社を見極めるための期間でもあると考えれば、試用期間が終了する時点で、会社から試用労働者に対し、このまま継続して働く意思の有無を確認されることが一般的になり、その際、労働者が継続しない旨の意思表示をすることは、通常の退職の意思表示と比較するとまだハードルが低いのではないかなと考えたりします(法律の話とはずれるかもしれませんが)。

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