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2025/03/04
各種保険

被災労働者にも過失がある場合の処理について(労災)

 

労災が起きた際、被災労働者自身にも過失がある場合は、どのような処理がされることになるのでしょうか。

 

労働環境の影響で労働者がうつ病に罹患し自殺したような場合ではなく、被災労働者自身の事情で、職場において故意に負傷、自殺したような場合は、そもそも業務災害ではないとして処理されることになりますが、そのようなケースは例外的でしょう。

 

そのような例外的でない場合にどう処理されるかが今回のテーマです。

 

繰り返しになりますが、労基法上は、使用者の過失の有無にかかわらず、使用者は、労働者の業務災害については補償すべき義務があります。それは、被災労働者側に過失があった場合も変わりません。

 

ただし、労基法は、労働者が重大な過失によって業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよいとされています(労働基準法78条)。

 

逆に言うと、労働者に単なる過失があったにすぎない場合は、使用者の災害補償義務はなくならないということになりそうですが、以下のとおり、労災保険法等に基づき災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れます

 

労働基準法84条(他の法律との関係)

この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

 

ちなみに、労災者災害補償保険法上も、以下のとおり、労働者側に一定の責任が認められる場合の免責条項が設けられています。

 

労働者災害補償保険法12条の2の2

労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。

② 労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

 

このように、労働基準法・労働者災害補償法上は、労働者の重大な過失による労災に関し、一定の補償・給付の制限が行われることになります。

 

では、労働基準法に基づく災害補償、労働者災害補償法に基づく給付を受けられなかった損害について、被災労働者又は遺族の使用者に対する民法上の損害賠償請求は全額認められるのでしょうか。

 

この点、使用者に労働安全衛生法違反等の過失があり、使用者と労働者間の労働契約に基づく安全配慮義務違反や民法に基づく不法行為責任が認められる場合、労働者は、労災保険給付等で補填されなかった損害分の賠償請求をすることができます

 

ただし、労働者側にも過失が認められる場合は、損害の公平な分担を図る趣旨から、当事者の過失割合を考慮して金額を調整すること(過失相殺)が行われます(民法418条、722条2項)。

 

例えば、2000万円の損害が生じている場合に、過失割合が、使用者側6:労働者側4だとすると、労働者の過失割合は40%ということになるので、損害額から4割が減額され、労働者への支払いが認められる金額は1200万円ということになります。

 

当然、重過失の方が軽過失よりも過失割合が大きくなるので、労働者に重過失が認められるような事案であれば、請求額から大きく減額されるということになります。

 

先述のように、業務上のストレス等に関係なく、被災労働者自身の事情で、職場において故意に負傷、自殺したような場合は、労働者側の過失割合が100%と評価されかねず、仮に使用者に対する損害賠償請求の訴訟を起こしたとしても、請求が全て認められないという可能性も否定はできません。

 

ただ、労働者側の過失の有無及びその割合に関しては、交通事故のようにある程度定型化できる事案とは異なり、例えば、精神疾患の既往歴を会社に申告していないが労働者側の過失になるのか、労働者が使用する機械の操作を誤った場合の過失割合、事業所内を歩行中に同僚の運転するフォークリフトに轢かれた場合の過失割合等、判断が非常に難しい側面がありますので、過失相殺について悩まれることがありましたら、一度、弁護士に相談されることをおすすめします。

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