社会保険とはなにか、改めて聞かれると回答に窮するのではないでしょうか。
社会保険とは、「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」からなる社会保障制度(国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネット)の中の1つで、国民が、病気やけが、出産、死亡、老齢、障害、失業など生活の困難をもたらすいろいろな事故に遭遇した場合に一定の給付を行い、その生活の安定を図ることを目的とした強制加入の保険制度です。
(引用:厚生労働省「社会保障とはなにか」)
一般的には、健康保険、厚生年金保険、介護保険の3種類の総称として使用されることが多いです。会社に雇用される労働者に適用する保険には、健康保険(介護保険)、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4種類ありますが、健康保険(介護保険)と厚生年金保険のことを社会保険(狭義)と、雇用保険、労災の保険のことを労働保険と呼び、両者は区別されます。ただし、広義では、この4種類の保険をすべて含めて社会保険と呼ぶこともあります。
ちなみに、社会保険労務士が対象とする業務は、広義の社会保険に関するもので、非常に広い分野となりますが、弁護士が業務として扱うのは、強いて言うと、社会保険(狭義)の分野というより労働保険分野になりますが、労働保険分野の中でも、労災の申請手続きを代理すること以外、弁護士が代理人として行うことはほとんどないかもしれません。
ですので、社会保険に関する細かなご相談は、弁護士ではなく、お近くの年金事務所(健康保険、厚生年金保険)、ハローワーク(雇用保険)、労働基準監督署(労災)、社会保険労務士(社会保険全般)の先生にご相談ください(紛争案件は別です)。
社会保険労務士制度は、「企業の需要に応え、労働社会保険関係の法令に精通し、 適切な労務管理その他労働社会保険に関する指導を行い得る専門家の制度」とも説明されていることから(熊本県社会保険労務士会HP)、社会保険労務士は、主に会社、個人事業主を対象としており、個人の方が社会保険労務士にご相談される機会というのは、実際はあまりないのかもしれません。
社会保険労務士は、社会保険に関する専門家であるだけでなく、労務士という名前からも分かるように、会社の労務に関する専門家でもあります。労務というのは、労働に関する事務処理や管理業務全般を指し、具体的には、就業規則の作成や給与計算、社会保険の手続き、福利厚生の管理といったものを含み、社労士の先生に依頼すれば、労務に関することならなんでもしてもらえるのではないかと思われるかもしれません。
しかし、社会保険労務士が、事業主に代わって労働者との交渉を事業主の代理人として行い、主張、意思表示を行うことについては、特定社会保険労務士が裁判外紛争解決手続(ADR)のあっせんの場等で行う場合を除き、社会保険労務士法に根拠規定はなく、弁護士法72条に違反する(非弁行為)ことになってしまいます。
労務問題について交渉の代理人をお探しの場合は、弁護士にご依頼いただければと思います。