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2025/01/12
退職・解雇

有期雇用契約の雇止め(3)

有期労働契約の更新に関する労働契約法19条は非常に悩ましいとお話しさせていただきましたが、悩ましいというだけではなんのアドバイスにもならないので、今回は、もう少しだけ具体的なお話をさせていただくことにします。 

 

労働契約法3条1項(労働契約の原則)

労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

労働契約法のこの条項は、労働契約を締結し、又は変更するにあたっては、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の対等の立場における合意によるべきという労働契約の基本原則を確認したものとされています。

 

しかし、実際のところ、採用の段階において、使用者と応募者が対等の立場にあることの方が珍しく、力関係は個々のケースによって異なります。

 

 

このように、雇用契約において応募者の方から有期契約を選択することはまれで、有期契約を選択するのはほとんどの場合、採用者である会社側です。会社が、無期契約社員ではなくあえて有期契約社員を募集する場合、必ず理由があるはずです。

 

代表的な理由は、繁閑や短期案件に対応するため、臨時的に人材が必要だからというものです。

その他に考えられるものとしては、 

 

  

などが思い浮かびます。

 

裁判例等の知識がなくても、①、②は許されそう、③は微妙、④以下は法律上ダメなんじゃないかなと思われませんか。 

 

実際、その感覚は正しくて、判断が微妙な③については判例があり、以下のように判断されています。    

 

「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である」

 

なるほどなぁと思われませんか。 

 

④については、今は、同一労働同一賃金の原則があるので、かかる不合理な待遇の相違、待遇の差別的取り扱いは許されません。

 

⑤こそまさに、労働契約法が最も規制対象としている実態で、かかる使用者の恣意的な行動から労働者を保護するために規定されたのが、雇止めに対する規制(労働契約法19条)有期契約の無期転換制度(同法18条)です。

 

労働法制上の様々な規制を潜脱するために企業が考え出した知恵と、それに対する新たな規制の創設、そのいたちごっこの結果が、現在の複雑な労働法体系となって結実しているのですが、この両制度などその最たるものでしょう。

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