前回、有期雇用契約を更新しない(雇止めする)旨の意思表示は、30日前までに従業員の方に告知した方がよい(すべき)というお話をさせていただきました。
この意思表示さえすれば、有期雇用契約は当然に終了するかというと、話はそう簡単ではありません。
雇止めされる従業員保護のために、2012年に労働契約法が改正され、以下のとおり、一定の場合は、従業員からの契約更新(締結)の申し込みに対し使用者は承諾したものとみなす(拒否できない)という規定が新たに設けられています。
有期契約の無期転換制度(通算契約期間が5年を超える場合に認められる労働者の権利)がある中、このような制度を別に設ける必要があるのかという点も含め、非常に悩ましい規定ではあります。
労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
この長い条文を読んですぐに理解できる方はほとんどおられないと思います。
この条文は、それまでに積み上げられてきた判例法理を立法化したものなので、非常に長く、内容も複雑です。
ご自身のケースがこの法律の要件にあてはまるのか(従前と同一の労働条件での契約の更新・締結が認められるのか)、この条文を読むだけで判断できることはほとんどないのではないでしょうか。この規定はあくまでも裁判の際に規範となるものであって、現場の労務担当者や実際に会社との間で有期雇用契約を締結している労働者の方が規範とするにはあまりに文言が抽象的で不明確に過ぎるように感じます。
現場で判断できなければ弁護士、社会保険労務士に聞けばよい、最後は裁判で決着させればよいということなのかもしれませんが、それでは紛争は増えることはあってもいつまでたっても減少しません。
紛争が起きたときのことを考えることも重要ですが、いかに労使間の紛争を減らすか、ここに焦点を当てた議論も重要だと考えます。