労働契約法
(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
ここでいう「客観的に合理的な理由」は、次の4つに分けられるとされています。
(菅野和夫・山川隆一「労働法」)
1.労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失
2.労働者の職場規律の違反行為
懲戒事由とほぼ同じ内容で、懲戒解雇を避けあえて普通解雇を選択するようなケース
3.経営上の必要性に基づく理由
整理解雇、会社解散による解雇等
4.ユニオン・ショップ協定(企業に雇用された労働者は労働組合に加入する義務があり、採 用後一定期間内に労働組合に加入しない場合、あるいは加入した労働組合を脱退、除名されたときは、使用者はその労働者を解雇する義務を負うことを定めた労使間の協定のこと)に基づく組合の解雇要求
この4つのうち、最も頭を悩ませるのは、1の「労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失」の有無の判断でしょう。
会社が期待する技能・能力がないことが判明した
社内での意思疎通がうまくできず他の社員との間でトラブルを頻繫に引き起こす
他の社員と比較して勤務成績が悪く改善の見込みもない
精神状態が不安定で業務を全うできないばかりか周囲にも迷惑をかける
重い病気にかかりほとんど出社できなくなった等々、
様々な裁判例があります。
それぞれのケースにおいて、裁判所はどのような事情を重視し、この「客観的に合理的な理由」の有無についての判断をしたのか、解雇に関わる者としては、解雇する側も解雇される側も、知識として知っておいて損はないと思います。
一つ言えることは、雇用流動化が少しずつ高まりつつある今の日本においても、従業員を有効に解雇するというのはハードルがまだまだ高いということです。解雇しないで済むような手段をできるかぎり講じてきたか、それでも従業員の改善の見込みがなく解雇を選択する他ないと言えるのか。まだまだ、解雇というのは最後の手段と考えられており、それに至るまでの事情が重視されています。
ただ、今後、雇用流動化がますます進むと、解雇の有効性についての裁判所の判断も少しずつ緩やかになる可能性はあるのではないかと個人的には考えています。 入社後、3年以内に3割の新卒者が離職すると言われ、長期雇用システムが崩壊しつつある日本において、解雇を含む離職全体に対する世間のイメージも少しずつ変容しているように感じます。