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2025/03/21
各種保険

手から肩にかけて(上肢)の疾病の労災認定について

 

業務に起因する手から肩にかけての疾病についても、労働基準法施行則別表第1の二において、業務上の疾病の一つとして明記されています。 

 

 

労働基準法施行規則別表第一の二(以下の疾病に限りません)

 

一 業務上の負傷に起因する疾病

三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病

 1 重激な業務による筋肉、腱けん、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱

 3 さく岩機、鋲びよう打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与え 

   る業務による手指、前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害

 4 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後 

   頭部、頸けい部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害

 5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負

   担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病

 

 

 

 

このうち、上肢等に過度の負担のかかる業務によって、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手及び指に発生した運動器の障害については、上肢障害と呼ばれ、厚生労働省が、労災補償の対象とするための要件を定めた上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準を公表しています。

 

この中で、上肢障害の代表的なものとして、上腕骨外(内)上顆炎、肘部管症候群、回外(内)筋症候群、手関節炎、腱炎、腱鞘炎、手根管症候群、書痙、書痙様症状、頸肩腕症候群などが挙げられていますが、整形外科医でもない限り、これらの疾患名をきいても、具体的な症状、治療法についてはさっぱり分からないと思うので(私を含め、ほとんどの弁護士も分かりません)、肩こり、腕、肘などの痛みのことなんだなと考えていただければよいかと思います。

 

上記認定基準によると、次のいずれの要件も満たし、医学上療養が必要であると認められる上肢障害については、労働基準法施行規則別表第1の2第3号4又は5に該当する疾病として取り扱われることになります。 

 

(1)上肢等に負担のかかる作業(以下のように上肢等を過度に使用する必要のある作業)を 

   主とする業務に相当期間(原則として6ヶ月以上)従事した後に発症したものであるこ 

   と。

    

    ① 上肢の反復動作の多い作業

    ② 上肢を上げた状態で行う作業

    ③ 頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業

    ④ 上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業

 

(2) 発症前に過重な業務に就労したこと。

    

ここでいう荷重な業務とは、上肢等に負担のかかる作業を主とする業務において、医学経験則上、上肢障害の発症の有力な原因と認められる業務量を有するものであって、原則として次の①又は②に該当するものをいうとされています。

  

① 同一事業場における同種の労働者(同様の作業に従事する同性で年齢が同程度の労働者)と比較して、おおむね10%以上業務量が増加し、その状態が発症直前3か月程度にわたる場合

 

② 業務量が一定せず、例えば次のイ又はロに該当するような状態が発症直前3か月程度継続している場合

 

 

(3) 過重な業務への就労と発症までの経過が、医学上妥当なものと認められること。

 

 

上記通達にも書かれていますが、上肢作業に伴う上肢等の運動器の障害は、加齢や日常生活とも密接に関連しており、その発症には、業務以外の個体要因(例えば年齢、素因、体力等)や日常生活要因(例えば家事労働、育児、スポーツ等)が関与しています。また、上肢等に負担のかかる作業と同様な動作は、日常生活の中にも多数存在していることから、上肢障害の労災認定については、業務起因性を証明することが難しく、労災認定を受けることは決して簡単ではありません。

 

腰痛同様、日常的によく使う部位である上肢等の運動器の障害は、想像以上に苦痛と日常生活の不便を伴います。一般に、上肢障害については、業務から離れ、あるいは業務から離れないまでも適切な作業の指導・改善等を行い就業すれば、症状は軽快するとされていること、適切な療養を行うことによって概ね3か月程度で症状が軽快すること、手術が施行された場合でも一般的におおむね6か月程度の療養が行われれば治ゆするものとされていることから、少しでも上肢に異常を感じた場合は、無理することなく、早期に治療を始めることが重要とされています。

 

とはいえ、日々の作業の影響で腕や肩が痛いのでしばらく作業内容を変更してくださいなど、従業員の方から申し出ることなどそう簡単にできるものではないでしょう。

ここは、従業員に対する安全配慮義務を負っている使用者の方が配慮すべきということになりますが、言うが易く行うが難し・・、そこまで配慮できる余裕のある事業所はそんなには多くないというのが現状だと思います。

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