パート有期法9条
「事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。」
ここで禁止されているのは、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取り扱いであり、短時間・有期雇用労働者であること以外の理由、例えば、能力、業績、成果、勤続年数等に基づく差別的取り扱いについては、この条項は禁止の対象とはしていません。
具体的に言うと、例えば、賃金の支給額については、所定労働時間が短いことに基づく合理的な差異や、個人の勤務成績により生じる差異によるものについては許容されますが、例えば、通勤手当のように、一般的に所定労働時間の長短に関係なく支給されるものについては、通常の労働者と同様に支給する必要があります。
また、 経営上の理由により解雇等の対象者を選定する際、労働時間が短いことのみをもって通常の労働者より先にパートタイム労働者の解雇等をすることや、労働契約に期間の定めがあることのみをもって通常の労働者より先に有期雇用労働者の解雇等をすることは、差別的取扱いがなされていることとなるため、禁止されます。
(厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要」。
じゃあ、パート・有期雇用労働者の方を正社員より優遇するような取扱いはどうなんだと疑問に思われる方もいるかもしれませんが、パート・有期雇用労働者を正社員よりも有利に扱うことは禁止されていません。
パート・有期法は、パート・有期雇用労働者らを守るための法律であり、全ての社員を平等に処遇することを命じた法律ではないからです。
ちなみに、この9条は強行規定であり、これに違反する就業規則等の規定は無効となると解されています。
事業主がこの9条に違反している場合は、事業主の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局長による報告の徴収、助言、指導、勧告の対象となります。万が一、事業主が都道府県労働局長による勧告に従わない場合は、その旨を公表することができるとされていることに注意が必要です。