昨日(2月10日)、大阪市教育委員会は、児童に給食を無理に食べさせたとして、市立小学校の女性主務教諭(43)を減給10分1(1か月)の懲戒処分としたと発表しました。
総務省が公表しているデータによると、令和5年度中(令和5年4月1日~令和6年3月31日)に懲戒処分を受けた地方公務員の数は4,443人で、処分の種類別には、免職が605人、定職が888人、減給が1,401人、戒告が1,549人となっています。
免職:職員の身分を失わせる処分
停職:一定期間、職員を職務に従事させない処分
減給:一定期間、職員の給与の一定割合を減額する処分
戒告:職員の規律違反の責任を確認し、その将来をいましめる処分
判例では、懲戒処分とは、 当該公務員に職務上の義務違反、その他、単なる労使関係の見地においてではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において、公務員としてふさわしくない非行がある場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため、科される制裁と説明されています。
地方公務員に対する懲戒処分は、次の3つの事由にいずれかに該当する場合にすることができるとされています(地方公務員法29条)。
・地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
・職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
・全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
「することができる」とされているところがポイントで、上記に該当する場合であっても、実際に懲戒処分をすべきかどうか、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、懲戒権者に一定の裁量権が認められています。
この点、地方公務員に対する懲戒処分の違法性が問題となった裁判(最判平2.1.18)の判決文の中では、以下のように説明されています。
地方公務員につき地公法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、平素から庁内の事情に通暁し、職員の指揮監督の衝に当たる懲戒権者の裁量に任されているものというべきである。すなわち、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を総合的に考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを、その裁量的判断によって決定することができるものと解すべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである。
地方公務員法では、職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならないとされていて、各地方公共団体が、条例を制定し、指針(準拠すべきよりどころ又は準拠すべき基本的な方向、方法を示したもの)を定めています。
これらの指針は、あくまでも一応の目安であって、行政庁も裁判所もここに書かれている内容に拘束される訳ではありませんが、上記の判旨のとおり、懲戒処分が懲戒権者の裁量を逸脱・濫用していないか検討する際、懲戒権者が依拠したこの指針(裁量基準)を確認することになります。
大阪市の懲戒処分に関する指針によると、例えば、飲酒運転関係については、
ア 飲酒運転で人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 飲酒運転で人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職とする。この場合におい
て事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職とする。
ウ 飲酒運転をした職員は、免職又は停職とする。
エ 飲酒運転となることを知りながら、運転者に飲酒を勧めたり、飲酒運転の車に同乗した
職員は、免職又は停職とする。
とされており、懲戒処分の種類として、減給、戒告がなく、免職か停職のみで、非常に重い処分が選択されることが多いです。そのため、飲酒運転を理由とする懲戒免職処分、それに伴う退職手当全部不支給処分の効力が争われる例は少なくありません。
裁判上、考慮される事実としては、①飲酒に至った経緯、②飲酒量、③飲酒してからの経過時間、④被害者の有無、被害の大きさ、示談の有無、⑤それまでの懲戒処分歴、⑥検挙された事実の申告の有無などです。近年の傾向として、飲酒運転に対する厳罰化の流れを受け、免職・停職処分自体の有効性は認められる一方、退職手当全部不支給処分の有効性については、免職・停職処分と比較すると、処分の取消しが認めらえるケースが多い印象を受けます。