企画業務型裁量労働制とは、裁量労働制の1つで、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社等における企画、立案、調査及び分析の業務を行う労働者を対象とする制度です。業務遂行の手段や時間配分等の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務等について労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務につかせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなされます。専門業務型裁量労働制のように、対象業務の縛りはありませんが、対象者の無制限な拡大を防止するため、厳格な手続及び要件が定められています。
かかる制度が作られた背景には、経済社会の構造変化や労働者の就業意識の変化等が進む中で、活力ある経済社会を実現していくために、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得る環境づくりが必要となっていること、労働者の側にも、自らの知識、技術や創造的な能力をいかし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性をもって働きたいという意識が高まっていることがあります。
同制度は、2000年(平成12年)4月から施行されていましたが、想定していたほど利用が伸びなかったことから、平成16年1月1日より、この制度がより有効に機能するよう、導入・運用についての要件・手続が緩和され、令和6年4月からは、運営規程や労使委員会の決議に定めるべきものが追加されています(改正に伴い、労使委員会の決議届の様式も変更されています)。
同制度の適用対象となる業務は、各労働者について判断され、次の要件をすべて満たした業務が対象業務となります(全てのホワイトカラー業務が対象となるわけではありません)。
① 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
② 企画、立案、調査及び分析の業務であること
③ 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
④ 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体亭な指示をしないこととする業務であること
対象となる労働者は、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であって、かつ企画業務型裁量労働制により労働することについて同意した労働者である必要があります。
この同意に関しては、労使委員会で以下の事項を決議する必要があります。
使用者は、労働者本人の同意を得るに当たって、苦情の申出先、申出方法等を書面で明示する等、苦情処理措置の具体的内容を対象労働者に説明することが適当とされています。
具体的な企画業務型裁量労働制の導入の流れは以下のとおりです。
労使委員会を組織する
↓
実施のための労使委員会で決議をする
↓
対象となる労働者の同意を得る
↓
労使委員会の決議に基づき、対象労働者について適用を開始
↓
決議の有効期間の満了(3年以内とすることが望ましい)
使用者は、決議の有効期限の始期から起算して初回は6箇月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回、所定様式により所轄労働基準監督署に対し、対象労働者の労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、同意及びその撤回の実施状況について、定期報告を行う必要があります。