事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施する必要があります。特別なものを除くと、雇入時の健康診断と定期健康診断の2種類あり、雇入時の健康診断というのは、常時使用する労働者を雇い入れる際に実施する健康診断で、所轄労働基準監督署長への報告は必要ありません(労働安全衛生規則43条)。
一方、定期健康診断というのは、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的に実施する健康診断のことをいい、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、『定期健康診断結果報告書』を所轄労働基準監督署長に報告する必要があります。
この健康診断は、すべての従業員に対し、同じ日に同じ医療機関で一斉に受診させなければならないというわけではありません。従業員が別の日に個別に受診する方法でも問題ありません。その場合は、従業員が各自で病院の予約を取り、受診します。
健康診断は常時使用する労働者に対し実施されるものなので、パート社員には実施なくてもよいのでしょうか。
結論から言うと、無期契約となっているか有期でも契約から1年以上経過し、週30時間以上 (正規従業員の4分の3以上)働いているパート従業員には、定期健康診断を受診させることを義務づけられています(通達)。
少し古い統計にはなりますが、厚生労働省が平成26年に実施した「パートタイム労働者等の健康管理事業」に関する調査によると、本来、定期健康診断を受診すべきパート社員のうち、実際に受診している割合は7割程度とされています。パート社員として入社予定の方は、入社しようとする会社が社員の健康管理に配慮している会社かどうかの試金石として、パートでも健康診断を受診できますかと聞いてみることをおすすめします。
健康診断の費用は、事業者が負担すべきものとされていますが、従業員が受診するのに要した時間分の賃金については、法律上、事業者に支払い義務はなく、労使間の協議によって決められることになります。ただし、従業員の円滑な健康診断の実施を考えれば、受診に要した時間の賃金を企業が支払うことが望ましく、多くの企業が健康診断中の賃金を支払っているようです。
健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者については、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。( 労働安全衛生法66条の4)。
そして、この医師又は歯科医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません(同法66条の5)。