人員削減する必要性が認められたとしても、リストラの対象となる社員の人選については会社が恣意的に行ってはいけません。客観的で合理的な選定基準を事前に設定し、その基準に沿って公正に選定する必要があります。
リストラの本来の意味(事業の再構築)からすると、リストラは、市場環境の変化など、企業が直面するさまざまな状況に対応し、競争力を向上させるための戦略として行われるもの全てを指しますが、日本で一般的にリストラという場合、不採算部門の整理(閉鎖)を伴うことが多いのではないでしょうか。
もちろん、すべての部門が不採算というケースもないわけではありませんが、その場合は、整理解雇などではなく、会社自体の解散を検討すべき段階になります。会社が解散されると労働者の雇用を継続する基盤は失われるので、通常、従業員に対し退職勧奨を行い、合意による退職を目指すことになります。そして、従業員が合意退職に応じない場合は、やむをえず会社の解散を理由とする解雇をすることになります。この解雇について、①手続的配慮を著しく欠いたまま行われたと評価されたり、②解雇の原因となった解散が仮装されたもの又は既存の従業員を排除する等の不当な目的でなされたものと評価されたりすると、解雇権を濫用したものとして無効と評価される可能性があるので注意が必要です。
話を整理解雇に戻すと、リストラの対象とする社員の選定に関し、単に廃止部門に所属していたという理由だけでは、選定に合理性がないと判断される可能性があります。
解雇回避措置に関しては、複数の事業所をもつ会社が一つの事業所を閉鎖する場合に、閉鎖する事業所の従業員について配置転換をどの程度検討すべきか、他の事業所においても希望退職の募集をする必要があるかという点も問題となります。
仮に、この解雇回避努力が肯定される場合、部門を閉鎖することによって、その部門に残る人員全員を解雇の対象とすること自体は、人選として恣意性がないので人選の合理性は認められやすいでしょう。ただし、廃止される部門に残る人員のうち一部のみ整理解雇の対象とする場合は、なぜその一部なのかという点で問題になりうるので、合理的な人選基準を設定した上で、公平に適用する必要があるということになります。
選定基準の内容は、それまでの勤務態度の優劣(欠勤日数、遅刻回数、処分歴等)、労務の量的貢献度(勤続年数、休職日数等)、労務の質的貢献度(過去の実績、業務に有益な資格の有無等)、会社との結びつきの度合い(正規雇用者、臨時雇用者の別等)、労働者の個人的事情(年齢、家族構成等)などが基準になると考えられていますが、あくまでも個別具体的な事情に応じて総合的に判断されるので、どの基準を採用するのが合理的なのか、一律に決めることはできません。