リストラ(整理解雇)とは、経営上の理由で人員を削減するために会社が行う解雇のことで、普通解雇の一つとされています。
普通解雇の理由は、①病気・負傷に伴う労働能力の喪失、②能力不足、③協調性・コミュニケーション能力不足、④業務上のミスの頻発、⑤勤務懈怠、⑥職場規律違反等、さまざまなものがあり、ほとんどが労働者側の理由となっていますが、唯一、会社側の理由による普通解雇が、このリストラ(整理解雇)です。
労働者側の理由による解雇同様、解雇の一つであることから、解雇権濫用に対する制限(労働契約法16条)の適用を受けます。
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
長期雇用が一般的な日本において、会社側の事情による解雇については、裁判例の積み重ねの中で、解雇権濫用法理の適用においてより厳しく判断すべきとされてきました。具体的には、
① 人員削減の必要性
② 人員削減の手段として整理解雇を選択する必要性(解雇回避措置が尽くされているか)
③ 被解雇者選定の妥当性
④ 手続の妥当性
の4つの要素を中心に諸事情を総合的に判断し、解雇権の濫用に該当するか判断されることが多いです。
その際、対象となる労働者との間の雇用契約の内容、労使慣行の内容等が考慮されますが、一般的には、職種、就業場所が限定されている労働者の方が、整理解雇の有効性が認められやすいかもしれません。
その理由として、ほとんどの大企業のように、新卒を一括採用し職務や勤務地を限定せず、長期的に育成する雇用システム(メンバーシップ型雇用)を採用している場合、仮に不採算部門を整理することが決まったとしても、その部門に所属する従業員とはその部門のポストに限定した雇用契約を締結していない以上、廃止しない部署に異動させればよい(させるべき)と判断される傾向があるからです。それに対し、職種、就業場所が限定された雇用契約を締結していると、その対象となる職種、就業場所が廃止される場合に、そのような限定付きの労働者から解雇の対象とするのはやむを得ないと判断されることはあながち不合理とは言えません。
なお、令和6年4月1日以降、全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要となっています。
今後、同日以降に採用した労働者に対しては、会社として、明示した変更の範囲内において配転の可能性を検討すれば、解雇回避措置を尽くしたとして、整理解雇の有効性が認められやすくなる可能性はあります。
ただ、裁判実務において、仮に職務・勤務地限定の合意があり、その限定された範囲の職務・勤務地が廃止される場合であっても、労働者が配転を希望していた場合には、会社の解雇回避努力義務として、他の職務・勤務地への配置転換の可能性の有無やこれを踏まえた配置転換の打診の検討が求められる傾向があることからすると、実際のところ、労働契約締結時等における明示範囲の変更が裁判実務に及ぼす影響はあまりないかもしれません。