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2025/01/19
その他の労働条件

労働条件の変更(2)

労働条件の変更という場合に、最も馴染みのあるのは、労働契約等に基づきあらかじめ使用者に委ねられた権限の行使により労働条件を変更する場合でしょう。昇格・降格や配転、人事考課による賃金の引上げ・引き下げ等のことです。

 

人事考課とは、「従業員の日常の勤務や実績を通じて、その能力や仕事ぶりを評価し、賃金、昇進、能力開発等の諸決定に役立てる手続き」のことをいいます。 

 

 

従来、日本の会社においては、職務遂行能力によって従業員を職能資格に分類し、職能資格を基準にして賃金額を決めるいわゆる「職能資格制度」が採用されていました。この職能資格制度における職務遂行能力は、勤続によって蓄積されていく性質ものであることが暗黙の前提とされていることから、いったん蓄積された能力が下がるということは想定されていません。

 

一方、職位・役職を引き下げる降格の場合は、使用者は、労働契約法上当然に、組織内における労働者の具体的配置を決定・変更する広範な人事権を有していることから、就業規則等の具体的な根拠規定がなくても、人事権の行使として職位・役職を変更(低下)することができ、それが違法となるのは、権利濫用(労働契約法3条5項)となる場合に限られるとされています。

 

労働契約法3条(労働契約の原則)

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

次に、配転とは、従業員の配置の変更であって、職務内容または勤務場所が相当の長期間にわたって変更されるもののことをいい、このうち、同一勤務地(事業所)内の勤務箇所(所属部署)の変更が配置転換、勤務地の変更を伴う変更を転勤といいます。

 

 

分かりやすい例でいうと、医師、看護師、ボイラー技士などの特殊の技術、技能、資格を有する者については職種を限定して雇用されることが普通なので、原則として、職種の変更を伴う配置転換を使用者が一方的に行うことは許されません。ただし、このような特殊技能者であっても、長期雇用を前提としての採用の場合には、当分の間は職種がそれに限定されていても、長期の勤続とともに多職種に配転されうるとの合意が成立していると解されるケースもあることに注意が必要です。

 

また、労働契約上、勤務地が限定されている場合も、使用者が一方的に転勤させることはできず、転勤をさせる場合は本人の同意が必要となります。

 

 

従来、権利濫用と認められるのは、要介護状態にある老親や転居が困難な病気を持った家族を抱えその介護や世話をしていたり、本人が転居困難な病気を抱える従業員に対する遠隔地への転勤命令などのケースが多く、共稼ぎや子の教育等の事情で夫婦別居をもたらすような転勤命令は、業務上の必要性が十分に認められ、労働者の家庭の事情に対する配慮(住宅・別居手当の支給、旅費補助等)をしているような場合には、有効とされていきました。

 

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