職場におけるパワーハラスメントの定義
「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」
今回は、「労働者の就業環境が害されるもの」という要件について、お話させていただきます。
厚生労働省の指針によると、「労働者の就業環境が害される」とは、「当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。」とされています。
ここでいう「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいいます。 雇用される労働者なので、委任契約や請負契約に基づいて仕事をしているフリーランス等の個人や会社は、職場におけるパワーハラスメントを規制している労働施策総合推進法の対象となりません。
では、委任者、注文者等からの不当な圧力から全く保護されないのかというとそういう訳ではなく、労働施策総合推進法とは別の法律が、様々な場面を想定して保護しています。
例えば、立場の弱い下請け業者を保護する法律として、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独禁法)や「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)などがあり、フリーランスを保護するための法律として、ちょうど今日から施行される「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)があります。
会社の労務(法務)担当者としては、パワーハラスメントに関しなんらかの問題が発生した際、相手が、雇用している従業員なのか、業務委託先のフリーランスなのか、下請事業者(元請事業者)なのかによって、適用される法律が異なることに留意し、対応策を検討する必要があります。
ややこしいのは、形式的には、業務委託や請負契約であったとしても、その実態が労働者と認められる場合は、労働施策総合推進法を含む労働法制による保護を受けることになるので、この点、注意が必要です。