今回は、パワーハラスメントの法律上の定義からみていきましょう。
パワーハラスメントの定義は、法律の中で明確に書かれているわけではなく、労働施策総合推進法という法律に、
「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(第30条の2第1項)
「厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。」(第30条の2第3項)
と書かれていることを踏まえ、厚生労働省が定めた指針に書かれています。
この指針によると、職場におけるパワーハラスメントは、
「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」
と定義づけられています。
労働施策総合推進法と聞いて、そんな法律まったくなじみがない、聞いたこともないという方がほとんどのように思います。
正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といいます。
やたら長い名称の法律なのですが、この正式名称を読むと、この法律にパワーハラスメントについての規定があることに疑問を感じることが少なくなるかもしれません。パワハラ防止法と称されることも多いのですが、読んでいただいたら分かるように、パワハラ防止のみを目的とした法律ではありません。
ここで確認しておきたいことは、労働施策総合推進法には、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」と書かれ、上記指針にも、明確に「職場におけるパワーハラスメント」と定義づけられていることから分かるように、ここで対象となっているパワーハラスメントというのは、あくまでも職場におけるものであって、家庭内、学校等、職場以外で行われるパワーハラスメントについては対象となっていないということです。
ハラスメントとは、相手の嫌がることをして不快感を覚えさせる行為全般を意味し、その中で、優越的な関係を背景に行われるハラスメントは、職場に限らず、家庭内、学校等でも行われることがあります。
私がこのコラムの中でパワーハラスメントという用語を使用する場合、職場におけるパワーハラスメントのことに限定してお話しさせていただいていますので、その点、ご了解ください。