みなさんは労働力人口という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
労働力人口とは、国や地域の経済において働く意思と能力のある人々のことを指し、労働力調査においては、就業者(従業者と休業者を合わせたもの)と失業者を合わせたものとされています。いうならば、労働市場において供給側に立つ者の集まり、すなわち,一国の経済が財やサービスの生産のために利用できる人口ということになります。
就業者:実際に働いている人々。正社員、パート、アルバイト、自営業者などが含まれます。
失業者:仕事を探しているが、まだ就職していない人々。労働市場に参加し、仕事を求める意思がある人です。
一方、15 歳以上人口のうち、労働力人口以外の者を「非労働力人口」といいます。非労働力人口は,調査週間中に少しも仕事をしなかった者(ただし,仕事を休んでいた者や仕事を探していた者は除きます。)が主に何をしていたかにより,「通学」,「家事」,「その他(高齢者など)」の三つに分類されます。(総務省統計局「労働力調査の解説」)
専業主婦の場合、外部の有償労働に参加せず、家庭内での無償労働を主な仕事としていることから、家事や育児などの家庭内での労働は、経済の統計やGDPなどでは計測されないことが多いです。主婦が、パートタイムや在宅ワークを通じて働きに出ると、いわゆるパート等と扱われ、労働力人口に含まれることになります。
一方で、個人経営の商店や農家で家業を手伝っている家族については、無給であっても仕事をしたされ、就業者として扱われています(無給の家族従業者)。つまり、無償であることというより、家庭内での労働を仕事としているということを理由に、専業主婦は非労働力人口とされているのです。
個人的には、家庭内の労働と家庭外の労働を単純に分けることができるのか、疑問に思うところはあります。
冒頭で、労働力人口とは、一国の経済が財やサービスの生産のために利用できる人口のことだと説明しましたが、家事労働者も、財やサービスの生産のために利用できる人口と評価することもできるのではないでしょうか。家事労働者=非労働力人口と考えてしまうと、家事労働の重要性を軽視することに繋がらないか、一抹の不安を覚えます。
家庭内の労働のことを家事とも言いますが、家事を英語にすると、houseworkです。家庭外の仕事と家庭内の仕事のバランスをいかにとるか、多くの共働きの家庭での重要な課題です。ワークライフバランスというより、ワーク(家庭外)ワーク(家庭内)バランスをいかにとるかという問題は、個人の単なる嗜好の問題などではなく、誰でも考えざるを得ない重い課題です。働き方改革をめぐる様々な法改正は、個人がこのワークワークバランスをうまくとるための一助になると考えられます。