正規雇用労働者とは、一般的に、フルタイムで、無期の労働契約として雇用されている労働者のことをいい、正社員、正規従業員、正規雇用者などとも呼ばれています。それに対し、これらの要件を満たさない労働者が非正規雇用労働者とされ、パートタイム労働者、アルバイト、契約社員、期間の定めのある社員、嘱託、派遣社員などがこれに該当します。
非正規労働者は、2010年以降増加が続き、2020年、2021年は減少しましたが、2022年以降は増加し、雇用者全体のおよそ4割弱を占めています。(厚生労働省)。
そんな中、不合理な待遇差をなくし、労働者がどのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう、働き方改革関連法の一環として、正規・非正規雇用労働者間の待遇格差の是正に関する法令(労働契約法、パート法、派遣法)が改正され、2020年4月に、パートタイム労働者と有期雇用労働者を対象とするいわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」が施行、2021年4月1日からは中小企業にも適用されています。
ここで、パートタイム労働者とは、同じ事業主に雇用される正社員に比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者のことをいい、「パートタイマー」「アルバイト」「臨時社員」「準社員」などと呼ばれることもあります。
有期雇用労働者とは、事業主と、半年や1年などの期間を定めた労働契約を締結している労働者のことをいい、「契約社員」「嘱託社員」などとも呼ばれています。
パートタイム・有期雇用労働法は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の解消等の取組を通じて、労働者がどのような雇用形態及び就業形態を選択しても納得できる待遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃することを目指しているとされています。(厚生労働省「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)。つまり、フルタイムの正規雇用が一般的な社会から、多様な雇用形態を選択できる社会への移行を目指していると言ってもいいのかもしれません。
パートタイム・有期雇用労働法に規定された様々な条項の中でも中核をなすのが、8条の「不合理な待遇の禁止」と9条の「差別的取り扱いの禁止」になります。
(これについては、次回以降のコラムで説明します)
この8条と9条の違いがよく分からないという意見をよくいただきますが、8条は均衡待遇についての規定、9条は均等待遇についての規定になります。つまり、均衡待遇とは、前提が異なる場合は合理的な待遇差は許される(不合理な待遇差は許されない)ことをいい、均等待遇とは、前提が同じであれば同じ待遇をされるべきことをいいます。
もう少し具体的に言うと、均衡待遇というのは、職務内容、職務や配置の変更の範囲、その他の事情に違いがある場合は、それらの内容を考慮したバランスのとれた処遇(基本給、賞与、役職手当、食事手当、福利厚生、教育訓練等)にしなければいけないということで、均等待遇というのは、従事する仕事内容、他にも権限の範囲、残業の有無、転勤の有無や見込みなどが同じ労働者は同じ取り扱いをしなければいけないということです。