最低賃金が令和6年10月1日から順次、引き上げられています。全国平均の引き上げ額は過去最大の51円で、平均1,055円となります。大阪府の地域別最低賃金は、令和6年10月1日から1,114円になり、改定前の1,064円から4.7%引き上げられています。
ちなみに、最も高い最低賃金額は、東京都の1,163円、引き上げ率が最も高かったのは徳島県の9.4%で、改定前の896円から980円に大幅に引き上げられています。
そもそも、最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
最低賃金には、地域別最低賃金及び特定最低賃金の2種類あり、地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されます。特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます。
(引用:厚生労働省「最低賃金制度の概要」)
では、事業者が労働者との間で、最低賃金が引き上げられたことを知らずに最低賃金以下の金額で契約していた場合、その契約はどうなるのでしょうか。
この場合、労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とされ、無効された部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなされます(最低賃金法4条2項)
この最低賃金制度の例外として、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、特定の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています(最低賃金法7条)
対象となるのは、以下の労働者です。
1 精神又は身体の障害により著しく労働能率の低い者
2 試の使用期間中の者
3 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定のもの
4 イ 軽易な業務に従事する者
ロ 断続的労働に従事する者
減額特例の許可を受けようとする事業主は、所定様式による申請書を所轄の労働基準監督署に提出し、都道府県労働局長の許可を受けることが必要となります。減額率は、厚生労働省によって上限が定められているため、事業主の裁量で減額率を決まることはできません。事業主は、減額対象となる労働者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験等を総合的に検討して、当該労働者に適用する減額率を申請書に記載することになります。
この特例については、許可を受ける要件が細かく定められ、申請が面倒なこともあり、一般的にはあまり浸透していないように思います。