「高度プロフェッショナル制度」とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会(賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べ、使用者及びその事業場の労働者を代表するものが構成員となっている委員会のこと)の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。
働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目的とする、いわゆる働き方改革の一環として創設されました。
対象となる労働者は、使用者から確実に支払われると見込まれる1年間当たりの賃金の額が少なくとも1,075万円以上であり、以下の業務に常態として従事している労働者に限られます。
高度プロフェッショナル制度の対象労働者は、出勤・退勤時間や休暇を自由に決めることができるため、実働労働時間に関係なく、仕事の成果・業績に基づき、賃金が決定されます。すなわち、成果を上げてさえいれば、他の労働者と比較して労働時間が短かったとしても、給与の額に影響しないということです。
その結果、高度プロフェッショナル制度の対象労働者は、短時間で成果・業績をあげようとするインセンティブが働き、生産性が向上するというメリットがあると言われています。逆に、成果が給与額に直結しているため、成果を上げようとこれまで以上に長時間働き続けることになるのではという懸念もあります。しかし、仮に、長時間労働が常態化するのであれば、あえてこの制度を利用することなく、通常の契約にして残業代を支払ってもらうという選択もできるため、かかる懸念は杞憂かもしれません。
どちらにしても、この制度の導入に当たっては、労使委員会での決議や対象労働者の同意などが必要となるため、制度の利用が広がるには時間がかかるかもしれません。 ちなみに、厚生労働省が公開している高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況によると、令和6年3月末時点で、同制度の導入企業数は29社、対象労働者数は1,340人(このうちコンサルタント業務が1,269人)となっています