判例によると、「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」とされています。
使用者の指揮命令下に置かれている労働時間のことは、実労働時間とも呼ばれています。
それに対し、所定労働時間というのは、会社との雇用契約により労働者ごとに定められた「従業員が勤務する時間(労働時間)」のことをいいます。通常、就業規則や雇用契約書には始業時間と終業時間が記載されていますが、その始業から終業までの時間から休憩時間を引いたものが所定労働時間になります。
労働基準法では、労働時間の上限が「1日8時間・週40時間」と定められていますが、この法定の上限時間のことは、法定労働時間と呼ばれています。
会社が従業員に支払う賃金は、雇用契約書、就業規則等に記載されている所定労働時間を基準にするのではなく、あくまでも、使用者の指揮命令下にある実労働時間が基準となることに注意が必要です。
では、どういった時間が実労働時間と評価されるのでしょうか。純粋な休憩時間や移動時間は実労働時間には含まれませんが、厚生労働省による「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」によると、以下のような時間は実労働時間に当たると評価されています。
ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の
指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
判例・裁判例によると、①時間や場所などの制限によって行動に相当の制約がなされているか、②使用者からの義務付けの態様・程度(明示・黙示の命令か、黙認か)、③当該行為に要した時間が社会通念上必要かという点が考慮されていると解されます。