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2024/09/10
賃金・労働時間

医師の時間外労働の上限規制について

令和6年(2024年)4月から、医師の時間外労働の上限規制の導入が開始されています。ここでは、医師に適用される時間外労働規制の内容を簡単に説明します。

医師の時間外労働の上限規制は、医師の働き方改革の一環として導入されました。

これまで、病院に勤務する医師の一部は、人手不足、地域偏在、診療科偏在等の影響もあり、長時間労働が問題となっていました。特定科の病院勤務医師の過酷な労働環境もあり、自分で勤務時間等の調整がある程度可能となる個人クリニック等を開業をする医師が増えたことで、さらに病院勤務医師の数が減るという悪循環にも陥っていました。この悪循環を断ち切るため、厚生労働省は、医師の働き方改革と称し、様々な対策を提唱しており、時間外規制の導入はその一環になります。

一般に、労働基準法に基づく原則的な時間外労働時間の上限が月45時間・年360時間であるのに対して、診療従事勤務医については、業務の特殊性を考慮され、いわゆるA水準として月100時間(例外あり)・年間960時間までの時間外労働が認められています。所属する医師がすべてA水準であるならば、特に手続きは不要で、2024年4月からその医療機関には自動的にA水準が適用されています。

所属するすべての医師に対し、月100時間・年960時間の上限規制を一律に適用すると、医療現場の機能不全を引き起こしたり、結果的に上限規制が守られなかったりという結果になりかねないことから、年960時間を超えて時間外労働が必要な一部の医療機関では、年1860時間を上限として、A水準を超える内容の36協定を結ぶことができます。この場合、都道府県による指定を受ける必要があり、以下のように、「B水準」「連携B水準」「C水準」に分類されています。ただし、B・連携B水準は、2035年度末までに段階的に解消し、C水準は縮減することが想定されていることから、すべての施設において長期的にはA水準を満たすことを目標にする必要があることに注意が必要です。

 B、連携B、C-1、C-2水準が適用される医師は、年間の時間外・休日労働時間の上限が1860時間となり、非常に長い時間外・休日労働が可能となることから、こうした医師の健康を確実に確保するため、時間外・休日労働時間が月100時間以上になると見込まれる医師全員に対する面接指導や、勤務間インターバルの確保が、医療機関の管理者には義務づけられています。

医師一般の勤務医(A水準)月100時間未満(例外あり)年960時間以下いずれも休日労働含む 
地域医療確保のために派遣され、通算で長時間労働となる医師(連携B水準)月100時間未満(例外あり)年1,860時間以下いずれも休日労働を含む2035年度末を目標に終了
地域医療確保に欠かせない機能(3次救急等)を持つ医療機関の医師(B水準)
研修医等で短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師(C-1、C-2水準)月100時間未満(例外あり)年1,860時間以下いずれも休日労働を含む将来に向け縮減
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